第16回神経心理特別診
寒波の影響で大雪となった地方もあり、雪道を走行中に飛び出してきた鹿との接触事故により参加できなくなった先生が出るというハプニングもありましたが、今月も神経心理特別診を開催しました。今回は一人の患者さんを診察しました。
8年前から安静時振戦、歩行障害があり、パーキンソン病が疑われている方です。レム睡眠行動異常や幻視の病歴は明らかではありませんでしたが、noise pareidolia testは陽性で、嗅覚検査では明らかな嗅覚低下を認めました。Frontal Assessment Batteryでは軽度の成績低下がみられ、書字ではprogressive micrographiaが明らかでした。これまでの臨床経過から進行性核上性麻痺との鑑別が問題となった経緯があったようで、高次脳機能と運動機能を併せた評価の重要性を再認識する症例でした。
抄読会では、獨協医科大学の小林聡朗先生にRiddoch and Humphreysの”A case of integrative visual agnosia” (Brain 1987)を解説していただきました。視覚失認については以前Lissauerの1890年の論文を読みましたが、この論文では統覚型視覚失認 (apperceptive agnosia)と連合型視覚失認(associative agnosia)という二つの病型が区別されました。Riddoch and Humphreysは視覚処理をより細分化された情報処理段階でとらえています。低次の視覚処理と意味との連合の間に、視覚形態の統合をする段階を仮定し、この段階の障害に相当すると考えられる症例を提示して、統合型視覚失認(integrative agnosia)を提唱したのが今回の論文です。局所的な視覚特徴は知覚できるものの、それらを意味ある物体全体として統合できないという特徴にポイントがあります。錯綜図(overlapping figure)やキメラ図形を認識できない、内部を塗りつぶしてシルエットにすると呼称成績が上がるなど、興味深い所見が示されていました。1症例を非常に細かく調べた論文ですが、各検査が何を検証するためのものか、はいけいとなる病態仮説を理解して読む必要がある、読み応えのある論文でした。
抄読会の後は、大学近くの居酒屋「綱味」さんにお邪魔しました。予約客のみの営業で貸し切りでしたが、いつ訪れてもご主人の温かい人柄が感じられる、居心地のよい空間です。この日は山形風の芋煮をご用意いただきました。参加者全員が偶然にも東北地方にゆかりのある顔ぶれであったことから、地域ごとの芋煮の違いなどを話題に、懐かしい味に舌鼓を打ちました。
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