留学者の声
日本神経学会海外派遣プログラム:エジンバラ大学留学の御報告
神林隆道 先生
留学先
エジンバラ大学
留学期間
2024年4月~2025年3月
2024年4月〜2025年3月にかけて機能性神経障害(Functional neurological disorder:FND)領域のトップランナーの一人であるエジンバラ大学のJon Stone教授のもとへ留学させていただきました。FNDに対する診療や研究は、近年大きく進歩してきているものの、本邦では診断・治療や患者のサポート体制・教育など未だ不十分な点が多い領域です。FND診療において脳神経内科医が果たす役割は非常に大きく、今回の留学で経験したことを元に、本邦の脳神経内科のさらなる発展に少しでも貢献していきたいと考えています。
留学先では、主にFNDを診断するための陽性徴候の定量評価に関わる研究に従事させていただきました。今後も国際共同研究としても発展していける可能性のある研究であり、今後の展開が非常に楽しみです。その他にもSNSにおけるFNDの扱われ方などの研究にも参加させていただきました。
エジンバラは寒いイメージを持たれる方も多いかもしれませんが、冬も気温自体は東京と大差はなく、雪はほとんど降りません。逆に夏は涼しく、とても快適です(そもそも冷房も家にありません)。エジンバラは比較的こじんまりとした都市で、バスの交通網も発達していますが、天気がいい日は歩いて散策するだけでも歴史を感じられる建物から、景観の綺麗な川沿いなど見所がたくさんあり、気分が高まります。
Jon Stone教授をはじめとした研究チームのメンバーはもちろん、病院関係者の方々もとても親切に接していただき、一緒に食事に行ったり、クリスマスなどのイベント時には皆で集まって楽しく過ごしたこともとても良い思い出です。今回の留学を経て、人との出会いの大切さを改めて強く実感しました。
留学するまでの準備や、現地に行ってからも苦労することもありましたが、海外の研究者や同じ志を持った人たちと知り合い、つながりを持てたことは自分にとっても大きな財産になりましたし、国際的な視野を持つ上でも大変貴重な経験になりました。
留学に行くと決めるまでは色々と悩むこともありましたが、留学を前向きに考えている先生には、ぜひ勇気を持って一歩踏み出してみて欲しいと思います。きっと日本にいるだけでは味わえない新鮮でリアルな体験ができると思います。

研究チームメンバーとの食事会

Stone教授のご家族、園生名誉教授とイタリア(ヴェローナ)での学会にて
日本神経学会海外派遣プログラム:ローマ留学の御報告
北國 圭一 先生
留学先
Università Cattolica del Sacro Cuore 附属Gemelli 総合病院
留学期間
2019年〜2021年
私は2019年~2021年にかけてイタリア・ローマにある聖心カトリック大学ジェメリ総合病院の重度リハビリテーションユニットに研究員として留学をしました(Il Policlinico Gemelli | Università Cattolica del Sacro Cuore)。Luca Padua先生のもと、主に筋電図・神経伝導検査などの電気生理学的検査と神経筋超音波検査の応用について学びました。お気づきかもしれませんが私の留学期間はCOVID-19パンデミックの真っ只中でありました。留学早々、ロックダウンにあうなど研究は難航しましたがCOVID に関連した ICU acquired weaknessに関するケースシリーズ、CIDP・ALSの筋超音波所見の特徴、神経痛性筋萎縮症と頚椎症との鑑別における神経超音波の有用性などの論文を発表することができました。学術的な知見も大きな収穫でしたが、多くの人に出会い、異なる文化に触れたことは私の人生そのものにとってより大きな収穫となりました。私の留学は日本神経学会の海外派遣プログラムにサポートいただき、以下に報告させていただいています。面白い内容になっていると思いますので是非ご覧ください。


アイオア大学留学の御報告
斉藤 史明先生
留学先
Iowa大学
留学期間
1999年~2002年
私は1999年5月から2002年2月までアメリカ合衆国アイオワ州にあるアイオワ大学で留学生活を送りました。大学のあるアイオワシティーは大学を中心に発展してきた人口7万人の小さな街で、住民の大部分が大学やそれに関連した企業で働く人々、そして学生です。留学前は英語もなかなか通じないし、やっていけるのかとても不安でした。しかしこの街のアメリカ人は思いのほかフレンドリーな人たちでした。到着して3日目に買い出しのためにスーパーに行きましたが、ここのトイレで見ず知らずの50代くらいの男性に声をかけられました。”どこから来た?”→”日本です”、”いつ来たんだ?”→”3日前に来ました”との会話の後で、急に満面の笑みを浮かべて”Welcome to Iowa City!!”と大きな声で叫び握手されました。また郊外で車が故障して動かなくなってしまい家族一同車の外に出て困っていると、たまたま通りがかった40代くらいの女性が車を止めて”送ってあげるからこの車に乗りなさい”と声をかけてくれました。これらはなかなか日本では経験することのないエピソードです。一方研究面ですが、自分は筋ジストロフィーの分子病態をテーマに仕事をしていました。この3年間は病棟や外来、当直、学生実習などのデューティーはなく、純粋に研究に没頭できる貴重な期間です。この留学が終わった頃にはどんな成果が出るのだろうかと、いつもわくわくしながら研究生活を送っていました。その結果Nature、Cell、Neuronといったトップジャーナルと呼ばれる学術雑誌に名前を載せる事ができ、大変大きな収穫となりました。このように3年弱と短い留学生活ではありましたが、人生観が変わると言っても過言ではないような数々の経験をすることができました。若い先生方も、もし留学するチャンスがあるようでしたら是非ともチャレンジする事を強くお勧めします。