第3回神経心理特別診
第3回神経心理特別診を行いました。当院のリハビリテーション科スタッフ、学生さん、平成帝京大学の永井教授や外部の先生方など大勢参加されました。
最初に意味型原発性進行性失語症 (svPPA)の患者さんを対象に呼称、ことわざの補完、SALA-AC6(名詞の類似性判断)など言語の課題を行いました。呼称課題では切手がハンケチになってしまうような誤りがみられ、ことわざの補完はできても意味が分からないことが多く見られました。都市の場所がわからないという訴えがあり、白地図に都市を記入してもらうと鹿児島を紀伊半島に書き込んでいました。このように典型的なsvPPAとは異なる症状がみられる点が興味深い症例でした。
次に、両側前大脳動脈(ACA)梗塞で、両側Heubner動脈閉塞による尾状核頭部病巣により脳卒中後のpsychosisが1か月以上遷延している方の診察をしました。両側ACA梗塞でしばしばみられる自発性の低下やアパシーは顕著でなく、聴理解や数唱は保たれているにもかかわらず場所の妄想性誤認が目立ち、現在自分が居る場所がニューヨークであったり宇宙であったり変化しました。Frontal Assessment Batteryは6/18でした。脳卒中後のpsychosisは5%程度の患者にみられ、特に右半球損傷後、特に前頭葉、側頭葉、尾状核を含む病巣に多いとされています(Stangeland et al. JNNP 2018)。Psychosisは約17%の患者で平均3.5か月の間に完全に消失するとされますが、1年後に妄想や幻覚が残る場合も少なくはないようです(Int J Geriatr Pschiatry 2015)。
特別診の後は、小林が歴史的に有名な前頭葉損傷患者Phineas Gage(Harlow J Boston Medical and Surgical Journal 1848)とEVR(Eslinger and Damasio Neurology 1985)の報告を紹介し、前頭葉症状と前頭葉課題、流動性知性について皆で議論しました。
抄読会の後は十条の居酒屋「キンクラ」でお食事会をしました。リハ科スタッフで参加申し込みをされていた方がいたのに、集合場所をお伝えしていなくて合流できなかった不手際があり大変失礼しました。次回はそのようなことがないようにいたしますので、是非ご参加ください。
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