第4回神経心理特別診
今回の神経心理特別診は学生さんが試験前で少なかったものの、リハビリスタッフに加えて外部の先生方にもご参加いただきました。
はじめに、臨床経過からは行動障害型前頭側頭型認知症(bvFTD)が疑われる症例で、一般神経診察、Frontal Assessment Battery(FAB)、ACE-IIIの一部を施行しました。神経所見としては、発動性の低下と反響言語(echolalia)が目立ち、わずかに左優位の筋強剛、垂直>水平方向の眼球運動制限に加え滑動性眼球運動にsquare wave jerkがあり、衝動性眼球運動の潜時は遅延していました。その他に本能性把握反応、Applause signといった症候が観察されました。心理検査ではMMSEが15/30であるのと比較してFABは2/18と、前頭葉課題での成績低下が目立ちました。語流暢性課題が「かみそり」の一語の産生にとどまった一方で、ACE-IIIの線画呼称課題では12個すべて正解と対照的でした。SPECTで前頭葉血流低下が左右差なくみられることなどからも進行性核上性麻痺(PSP)が示唆されました。
次に、左側頭葉内側面、後部帯状回、縁上回に広がる病巣を持つ脳炎後の症例の記憶を評価しました。この方は急性期には失語がみられましたが、現在はほぼ回復しています。前向性記憶はS-PAが有関係 1-3-3、無関係 0-0-0でした。生活史健忘も目立ち、東日本大震災、阪神淡路大震災の記憶は曖昧で、神戸で大地震があったのは2年前と答えるなど逆向性健忘が明らかで、時間系列記憶の障害がみられました。
特別診の後は、独協医大から参加してくれた小林聡朗先生がHugo Liepmannが1900年に報告した有名な帝国参事官の症例の論文(Liepmann H. Das Krankheitsbild der Apraxie auf Grund eines Falles von einseitiger Apraxie. Monatsscharift f. Psychiatrie u. Neurologie 1900)をレビューし、失行という概念が確立された過程について議論しました。
抄読会の後は、有志が集まり、十条のイタリアンSHUSHUDAで懇親会をしました。このお店の自慢の炭火焼きハンバーグをはじめ、魅力的なイタリアンを皆で貪欲に堪能しました。
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